灼熱――評伝「藤原あき」の生涯(110)

執筆者:佐野美和2020年7月19日
撮影年不詳ながら、義江との離婚、独り立ちを決意した頃のあき(自伝『ひとり生きる』=ダヴィッド社、1956年=より)

 インタビューの際に撮影された、参議院議員任期折り返し3年目のあきの写真も久しぶりに掲載される。

 笑顔であり、選挙中のものと比べると、肌ツヤなどはそのままの若さを保っているが、上半身が前にかたむきしおれているようで、いかにも辛そうな近影である。

 あきの身体に関して、テレビ『私の秘密』時代から度々視聴者に指摘されてきたのは、

「藤原あきさんはバセドウ氏病なのではないか」

 という投書だ。

 もともと大きな瞳であったが、どうも眼球が飛び出てくるような独特の眼光を放っているというのは、その病気ではないのか。選挙中や政治家になってからもよく指摘されるのだ。

 バセドウ氏病と言われる甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることによって、疲れやすくなったり、目が飛び出したように大きく見えたりとさまざまな症状が出るという。

 

 すでに昭和39(1964)年の舞台『ノーストリングス』でテノール歌手としての第一線から退いている義江だが、日本オペラの第一人者としての夢がある。それはオペラの国立劇場建設という悲願だ。

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