「雨傘運動」の失策にもかかわらず重用されてきた梁振英氏(C)EPA=時事

 

 このたび施行された「国家安全維持法」による香港の現状――「高度な自治」を謳った「一国両制(二制度)」が突き崩される過程を追って見ると、特別行政区政府の頭越しに習近平政権の意向を代弁するかのような動きを見せる人物が浮かび上がってくる。

 その人物こそ、2012年から2017年まで第3代香港特区行政長官を務め、現在は「中国人民政治協商会議全国委員会」(「全国政協」=参議院に相当)副主席を務める、梁振英である。

 最近の彼の政治的振る舞いは、香港社会を構成する3本柱の内の「政治」と「経済」を結び付ける一方で、残る「民意」を封じ込める方向に作用していると思える。さしづめ「大物フィクサー」とでも言えそうだ。

 そして驚くべきことに彼は、三十余年以前に「高度な自治」を条文化した「香港基本法」の作成に、咨詢(諮問)執行委員会の秘書長として大きく関与していた。香港基本法の中に、最初から「一国両制」から「一国一制」へのカラクリが密かに仕掛けられていたと考えるのは、飛躍が過ぎるだろうか。

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