世界が注目する「逸材」を救った奨学財団

執筆者:出井康博2009年2月号

 二〇一三年の打ち上げを目指し、日本で小型人工衛星の開発プロジェクトが進んでいる。人工衛星には合成開口レーダー(SAR)という特殊なレーダーが搭載され、地震予知などの分野で画期的な進歩が期待できる。 世界的にも注目されるこのプロジェクトには、気象情報会社「ウェザーニューズ」や、千葉大学、文部科学省など日本の産学官が共同で関わっている。それを率いるのはインドネシア出身の千葉大准教授、ヨサファット・テトォコ・スリ・スマンティヨ氏(三八)だ。「日本のみならずアジアの国々では地震が頻発しています。最近でも二〇〇四年にインドネシアでスマトラ沖地震が起き、二十万人以上が犠牲になった。私たちが進めるプロジェクトは、地震発生の四―五日前に電離層の表面で生じる温度変化を観測し、予知を可能にするのです」 SARや人工衛星は、ともにヨサファット氏が自らの研究室で開発する。SAR搭載の人工衛星は過去にも日本で打ち上げられているが、今回は画像精度の大幅な向上が見込まれる上、同種の人工衛星として世界で初めて百キロ以下の重量を実現した「省エネ・低コスト型」だ。それでも費用は十億円に上るが、プロジェクトには様々なビジネスの可能性がある。

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