小和田恆氏が語る「途上国開発」への問題意識

執筆者:白戸圭一2020年8月1日
 

 

 今から46年前の1974年10月30日、アフリカ大陸中央部に位置するザイール共和国(現国名「コンゴ民主共和国」)の首都キンシャサで、プロボクシングWBA・WBC世界統一ヘビー級タイトルマッチが行われた。挑戦者モハメド・アリがチャンピオンのジョージ・フォアマンを劇的な逆転KOで下し、王者に返り咲いた「キンシャサの奇跡」と呼ばれる一戦である。

 ニューヨークなど米国東部のテレビ視聴者が夜のゴールデンタイムに試合を楽しめるように、試合は現地時間の午前4時に始まった。

 常軌を逸した試合開始時刻を設定してまでタイトルマッチを開催したのは、当時のザイール大統領だったモブツ・セセ・セコ。1965年のクーデターで政権を掌握後、1997年まで約32年間、権力の座に君臨した稀代の独裁者であった。

 モブツが長きにわたって権力を維持できた理由の1つは、米国の後ろ盾であった。

 ザイールはアフリカ大陸中央部という地政学的な要衝に位置し、国内には核兵器原料となるウランの鉱山があった。東西冷戦時代、親米反共のモブツを援助してザイールを管理下に置いておくことは、米国の国益に適っていた。

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