事件の背後に見え隠れするベラルーシ大統領選。中央がチハノフスカヤ候補(C)EPA=時事

 

 7月29日、旧ソ連15カ国の1つであるベラルーシのメディアは、同国内で33人のロシア国民が逮捕されたという速報を一斉に流した。容疑は「ベラルーシにおける情勢の不安定化」、つまり内乱の惹起である。

 続いて逮捕の模様を収めたビデオが出回り始めた。ホテルの部屋に次々と踏み込む特殊部隊。うつぶせに組み伏せられて手錠をかけられる屈強な男たち。彼らの鞄から取り出されたロシアのパスポートや「死が俺たちのビジネス」と書かれたパッチ……。

 結論から言えば、彼らは「ワグネル」というロシアの「民間軍事会社(PMC)」のコントラクター(社員)たちであった。

 では、ワグネルとは一体どのような組織なのか。彼らはなぜベラルーシにいたのか。彼らが「情勢の不安定化」を図っていたというのは本当なのか。本稿ではこれらの点について順に解説していきたい。

PMCが重宝される理由

 本題に入る前に述べておきたいのは、PMCには様々な形態が存在するということである。真っ先に思い浮かぶのは、カネで雇われて戦う「傭兵」だが、これはPMCの一形態に過ぎない。

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