ベトナム人留学生らは日本人が就労しないこうした作業のアルバイトもこなさねばならない(イメージ写真です)(C)時事
 

 7月17日午前10時前——―。

 栃木県宇都宮市の空は梅雨の厚い雲に覆われていた。気温は20度前後と、この時期にしては低い。

 そんな中、ベトナム人留学生のクオン君(25歳)は、市中心部にある東京出入国在留管理局宇都宮出張所に向け、自転車を走らせていた。

 1週間ほど前、入管当局から「17日の10時に来てもらいたい」との連絡があった。呼び出しの理由は告げられなかったが、クオン君には思い当たる節があった。

 今年3月に日本語学校を卒業して以降、クオン君は学校に通っていない。食品関連の工場でのアルバイトも週3日だけなので、時間はたっぷりある。入管に「はい」と返事をして、電話を切った。

 ベトナム人の友人とシェアするアパートから入管までは自転車で10分ほどだ。4月以降、ビザの更新問題で何度も訪れ、すっかり通い慣れている。

 入管に到着すると、まず入り口に置いてあった消毒液を手に吹きかけた。新型コロナの感染リスクを避けるため、職員たちは皆、マスクで顔を覆っている。案内された部屋の前にも消毒液がある。それをもう一度手につけ、

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