新型コロナウイルスが発生したことを私たちが知ったのは、2020年に入ってまだ間がない頃だった。それから半年ほどがたち、このウイルスの性質も少しずつわかるようになってきた。とともにウイルスの広がりは、私たちの社会の脆弱性も暴きだした。現代社会の構造が、感染の広がりとどのように関係しているのか。そして私たちの社会はこれからどんな変化をみせるのか。そのことを課題にしながら、現時点でみえていることを考察してみようと思う。

「わからないもの」との共存

 現在までの発表によれば、新型コロナウイルスの感染者が中国、武漢で最初に発見されたのは、2019年11月のことだった。翌年になると、武漢の惨状が世界に伝えられていくようになる。爆発的な感染の広がり。医療崩壊。病院の廊下で息を引き取る人たち。ふえつづける死者。有効な治療方法の不在。テレビにはセンセーショナルな映像が流れ、それはさまざまな人々に、不安と怯えを与えることになった。それほど時間をおくことなく感染は西ヨーロッパ諸国からアメリカへと拡大し、さらに全世界に広がっていった。

 感染拡大がはじまった当初は、このウイルスがどの程度の感染力を持ち、重症化率や致死率がどのくらいなのかもよくわからなかった。だがいまでは、ある程度の判断が可能になっている。どうやらこのウイルスの致死率はさほど高くなく、インフルエンザとそう大きくは変わらないようだとか、にもかかわらず血栓ができるなどして急速に重症化するときがあるとか、一部の感染症の薬が効果をだすことがあるとか。

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