【特別コラム】コロナと生きるということ(1)不安の正体

執筆者:内山節 2020年8月10日
エリア: アジア
 

 新型コロナウイルスが発生したことを私たちが知ったのは、2020年に入ってまだ間がない頃だった。それから半年ほどがたち、このウイルスの性質も少しずつわかるようになってきた。とともにウイルスの広がりは、私たちの社会の脆弱性も暴きだした。現代社会の構造が、感染の広がりとどのように関係しているのか。そして私たちの社会はこれからどんな変化をみせるのか。そのことを課題にしながら、現時点でみえていることを考察してみようと思う。

「わからないもの」との共存

 現在までの発表によれば、新型コロナウイルスの感染者が中国、武漢で最初に発見されたのは、2019年11月のことだった。翌年になると、武漢の惨状が世界に伝えられていくようになる。爆発的な感染の広がり。医療崩壊。病院の廊下で息を引き取る人たち。ふえつづける死者。有効な治療方法の不在。テレビにはセンセーショナルな映像が流れ、それはさまざまな人々に、不安と怯えを与えることになった。それほど時間をおくことなく感染は西ヨーロッパ諸国からアメリカへと拡大し、さらに全世界に広がっていった。

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執筆者プロフィール
内山節(うちやまたかし) 哲学者。1950年、東京生まれ。群馬県上野村と東京を往復しながら暮らしている。著書に『「里」という思想』(新潮選書)、『新・幸福論』(新潮選書)、『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』(講談社現代新書)、『修験道という生き方』(共著、新潮選書)、『いのちの場所』(岩波書店)、『内山節著作集』(全15巻、農山漁村文化協会)など多数。
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