【特別コラム】近代という「神話」の終焉(5)
ロシアを戦争に走らせた現代の「覇権」

執筆者:内山節 2022年5月7日
 

 今回はウクライナ問題の背景に、近代社会のどんな問題が横たわっているのかを考察する。

戦争が形成した近代の世界

 西ヨーロッパで近代的世界が姿を現したのは18世紀のことだった。イギリスで産業革命がおこり、フランスでは1789年にフランス革命が成立した。国民国家、市民社会、資本主義的な市場経済が一体化した近代的世界のかたちがみえはじめた。

 この時代は、ヨーロッパ諸国がたえず戦争をくり返している時代でもあった。イギリス、スペイン、ポルトガル、オランダ、ベルギー、フランス、イタリア、ドイツなどが、ときにヨーロッパの地域内で、ときに植民地をめぐって戦いを繰りひろげていた。近代的世界は、戦争の世紀とともに形成されたのである。

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執筆者プロフィール
内山節(うちやまたかし) 哲学者。1950年、東京生まれ。群馬県上野村と東京を往復しながら暮らしている。著書に『「里」という思想』(新潮選書)、『新・幸福論』(新潮選書)、『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』(講談社現代新書)、『修験道という生き方』(共著、新潮選書)、『いのちの場所』(岩波書店)、『内山節著作集』(全15巻、農山漁村文化協会)など多数。
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