今回はウクライナ問題の背景に、近代社会のどんな問題が横たわっているのかを考察する。

戦争が形成した近代の世界

 西ヨーロッパで近代的世界が姿を現したのは18世紀のことだった。イギリスで産業革命がおこり、フランスでは1789年にフランス革命が成立した。国民国家、市民社会、資本主義的な市場経済が一体化した近代的世界のかたちがみえはじめた。

 この時代は、ヨーロッパ諸国がたえず戦争をくり返している時代でもあった。イギリス、スペイン、ポルトガル、オランダ、ベルギー、フランス、イタリア、ドイツなどが、ときにヨーロッパの地域内で、ときに植民地をめぐって戦いを繰りひろげていた。近代的世界は、戦争の世紀とともに形成されたのである。

 ゆえにこの時代には、国家や支配者にはいくつかのことが求められていた。強い軍事力をもつこと、そのためには強大な経済的基盤を確立すること、さらに新しい兵器を生み出せる技術力、開発力を保有することである。

 とともに、それらのことを実現するためには、第1に、効率が大事な概念になった。効率よく経済を発展させ、効率よく新しい技術を確立する。もちろん戦場でも、効率のよい戦闘態勢や武器、食糧などの補充が求められる。第2に、戦略、戦術という思考スタイルがここから編みだされた。敵を叩きのめすための基本戦略をたて、戦地では戦闘を勝利に導くための戦術を駆使する。第3に、上意下達的な指揮命令系統を確立することも大事だった。命令系統の混乱は、戦争では避けなければならない基本である。さらに第4に、皆が一斉に行動することも必要だった。敵に総攻撃をかけるときには、一斉攻撃でなければならない。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。