谷本喜久男氏の生涯が明かされる……(次女の牧田喜子さん提供、以下同)

 

 唐突だが、「ベトナム」(越南)と聞いて何を連想するだろうか。一定の年齢層ならば、「戦争」や「枯葉剤」などを思い浮かべるかもしれない。

 若者なら「フォー」や「生春巻き」「アオザイ」など親しみのある食や民族衣装のイメージが先行するだろう。

 だが、先ごろ最新作が公開されたシルヴェスター・スタローン主演のハリウッド映画『ランボー』シリーズの主人公が、心に傷を負ったベトナム帰還兵という設定であることを思い出してほしい。世界の超大国・米国において、ベトナムでの死闘は遠い過去の物語ではない。

 ベトナムは、日本の敗戦後に旧宗主国フランスを倒し、米国をも退け、独立と統一を成し遂げた世界最強の社会主義共和国である一方で、人々の親日感情は台湾に比肩し得るほど強く、現在の日越関係は「自然の同盟関係」と呼ばれるほどに緊密だ。

 この太い絆の根底に、「アジアの解放」を掲げて戦後もベトナムに残留し、独立戦争に身を投じた多くの残留日本兵の存在があったことを知る人は、戦後75年を迎え、次第に少なくなっている。

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