「ベトナム独立戦」を支えた旧日本軍「秘密戦士」の生涯(下)2つの受勲と悲劇
2020年8月15日
元陸軍少尉、谷本喜久男氏(1922~2001)はベトナムでの長年の野戦暮らしでマラリアなどに罹患し、その発症にも苦しんだという。
しかし、フランスの撤退を決定づけた1954年の「ディエンビエンフーの戦い」に勝利した後、帰国の道が開かれることになった。
この時期、日本、中国、ベトナムの赤十字社が協議、連携し、同年10月末には70人余の残留日本兵らがトラック、鉄道など陸路で約1カ月かけて中国・天津に移動。11月末には第9次引き揚げ船「興安丸」に乗って舞鶴港から本土に上陸し、帰郷を果たしている。
11年ぶりに帰郷した谷本氏
上陸に先駆けて喜びの帰郷を報じた鳥取の地元紙『日本海新聞』は1954年11月25日付紙面で、
「ヴェトナムから縣人一名 十一年ぶり故國へ 河原町出身の谷本氏」
と報じている。
ただし、「縣世話課」の調査として、1950年ごろに中部仏印で漁業などを営んでいる模様だと伝えられていたことを紹介しており、ベトナム独立戦への関与には一切触れられていない。
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