金融機関が集中する香港のセントラル地区。「国家安全維持法」で香港経済にも暗雲が立ち込めている

 

 ここへきて、シンガポール金融管理庁(MAS)の統計に異常な数字が表れている。

 シンガポールの銀行など金融機関に「非居住者」が預け入れた「預金残高」が急増しているのだ。非居住者とは、シンガポール国外に住む同国人も含まれるが、主として海外に住む外国人の預金である。

 非居住者の預金は2019年の7月頃から増え始め、2020年1月には前年同月比20%を超える増加を記録。ついに4月には43.8%増となった。その後も5月40.4%増、6月39.5%増と高水準が続いている。

 6月末の残高は、618億シンガポールドル(約4兆8000億円)。1年前は443億シンガポールドル(約3兆4400億円)だったから、わずか1年で日本円にして1兆3000億円以上も預金が増えたことになる。

 いったいなぜか。非居住者の居住地などは公表されていないため、正確には分からない。だが、金融市場では香港の富裕層が自分の資金をシンガポールに「逃避」させていることが、この異常な数字の原因と見られている。

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