2010年代の欧州は「ポピュリズムの10年」と位置づけられるだろう。もちろん、この間にギリシャ債務危機、ウクライナ問題、難民危機、大規模テロといった、もっと派手で目立つ出来事があった。一方で、こうした多様な危機に乗じつつポピュリズムが各国で根を張り、内に抱える危機として恒常的な問題と化したのも確かである。

 ポピュリズムの流れは、ハンガリーやポーランドでの権威主義政権の誕生と定着、2017年フランス大統領選でのマリーヌ・ルペンの決選進出、さらには英国の欧州連合(EU)離脱といった形で顕在化した。その現象はまた、米国でのトランプ政権誕生やロシアの選挙介入に代表されるように、欧州の枠にとどまらない動きと連動している。

 この傾向がこれからの10年もさらに拡大するだろうか。あるいは、これは一時的なものに過ぎず、今後は別の流れが生じるだろうか。その問いを考えるべき折に到来したのが、新型コロナウイルスだった。

 この感染症はすでに、経済や市民生活に明らかな影響を与えつつあるが、ポピュリズムをはじめとする政治への作用については不透明な部分が多い。両者の関係について、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のシンポジウムで交わされた議論に主に依拠しつつ、考えてみたい。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。