すれ違いのままでよいはずがないのだが(昨年12月の「日中韓ビジネス・サミット」にて)(C)時事
 

 メディア業界には「悪いニュースが良いニュース」という逆説的なフレーズがある。悲惨な事件や事故、深刻な政治対立など、つまりは「悪い」ニュースであるほど読者や視聴者に伝えるべき「良い」ニュースだ、というわけだ。

 韓国・文在寅(ムン・ジェイン)大統領の演説や記者会見が、毎回のように日本のメディアで大きなニュースとして取り上げられるのも、それだけ日韓関係が悪化しているために他ならない。

 とりわけ、8月15日の「光復節」に文大統領が行った演説は重要なものとなった。

 8月4日に「元徴用工」をめぐる訴訟で、韓国の裁判所からの差し押さえ通知が「日本製鉄」(旧「新日鉄住金」)に届いたとみなされる「公示送達」の効力が発生したためだ。

 これは、韓国大法院(最高裁)が同社に賠償を命じた判決を受けて、原告側が既に差し押さえた同社の資産を現金化する上で、節目となる司法手続きだ。日本製鉄が手続きの差し止めを求める「即時抗告」を行ったため、すぐに現金化とはならないが、それも数カ月間の「時間稼ぎ」に過ぎないだろうとみられている。安倍晋三政権は日本企業の資産が現金化されれば韓国への対抗措置も辞さない構えで、そうなっては、日韓関係は一段と深刻な状態に陥る。

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