昨年12月、北京で行われた首脳会談にて。新型コロナで「国賓来日」は中止されたが、新政権ではどうなるか(C)時事
 

 8月28日、安倍晋三首相が連続在任期間として歴代最長を記録した直後に、持病の悪化を理由に辞意を表明した。

 しかし、記者会見に臨んだ安倍首相の顔色と質問への受け答えを見るかぎり、職務を続けられないほど持病が悪化しているようには見えなかった。しかも、記者会見は61分32秒と長く続いた。持病が悪化しているとすれば、ここまで記者の質問を受け付けず、もう少し短い会見にすることができたはずである。

 おそらく、安倍首相の辞任は健康不安のほかに、支持率が急落していることと無関係ではない。残りの任期は1年だが、これからの1年間、支持率を押し上げるきっかけは見いだせない。それよりも、このまま首相の座に座り続けた場合、支持率はさらに下落する可能性が高い。首相の座を追われるよりも、潔く自ら健康不安を理由に辞任したほうが体面も保たれる。この推論は真実に近いのではないだろうか。

戦略を欠いていた「安倍外交」

 2012年12月に発足した第2次安倍政権を振り返れば、就任当初、手広く内政と外交に意欲的に取り組む姿勢を見せた。実際確かに、アベノミクスの成長戦略によって好景気が続き、株価が上がり、有効求人倍率もバブル期を超え最高を記録した。

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