たとえば熊本県が2014年に発行した市場公募型の地方債には、購入者に「くまモン」からの感謝状などの特典がついて人気だった(C)時事
 

 地方の財政が大きく傷んでいる。新型コロナウイルスの感染防止対策が、地方公共団体の財政を圧迫しているためだ。

 こうした状況に対して、財政立て直しのための有力な資金調達手段である「地方債」の活用に関心が高まっている。

 だが、「新型コロナ対策のための発行」は行われない。その理由はいったい何なのか。

急激に悪化する地方財政

 国はもちろんだが、地方公共団体(以下、地公体)でも、新型コロナ感染拡大の防止や休業要請に伴う支援金の支給、検査体制の拡充や医療体制の強化などで、財政支出が大幅に増加している。

 このような状況が出来したときのため、「財政調整基金」という、地公体が年度間の財源の変動に備えて積み立てる基金がある。いわば地公体の貯金のようなものだが、たとえば東京都の場合、2019年度決算ベースで9345億円あった「財政調整基金」は、新型コロナ対策の「経済活動と都民生活を支えるセーフティネットの強化(6850億円)」、「新型コロナの感染拡大を阻止する対策(3320億円)」などにより、2020年度は807億円にまで減少する。

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