2020年は「イスラエル外交の年」

執筆者:池内恵2020年9月13日

イデオロギーや政治的・外交的党派の違いを超えて、認めなければならないのは、「2020年はイスラエル外交の年」と言えるということである。イスラエルの積み重ねて来た数多くの施策が、ここで一気に噛み合いつつある。それはイスラエルが深く食い込んだトランプ政権が再選の選挙の年を迎えているという事情もあるが、同時に、昨年の失点を挽回する策を次々に打って、それが功を奏していることも確かである。

前年の2019年は、さしづめ「イラン反撃の年」と言えるだろう。米トランプ政権が対イラン「最大限圧力」政策を2019年を通じてかけ続け、それに対してイランが耐え忍び、むしろ対サウジ石油施設の攻撃によって一矢報いて、GCC諸国の脆弱性を顕にした。

これは対イラン「最大限圧力」政策をトランプ政権に(それ以前の米政権にも)ロビイングや政策提言のあらゆる手段を用いて売り込み、サウジアラビアやUAEを前面に押し出してイランに対峙してきたイスラエルにとっては「躓き」だった。

イスラエルが最も有望な同盟相手として接近し、梃入れをしてきたサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子のたび重なる失態も、同時期に露見していた。

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