14世紀にユーラシア大陸でペストが蔓延したときは、背景にモンゴル帝国の展開があった。東アジアから中東、東ヨーロッパにいたる広大な帝国の成立は、当時のグローバル化された世界を生みだしていた。シルクロードなどを使った人と物の移動が活発になり、中国の雲南省あたりで発生したらしいペスト菌は、ユーラシア大陸全域に広がっていった。

爆発的感染は都市社会で

「新型コロナウイルス」の感染拡大も、その背景にグローバル化された世界があることは間違いない。人間の体内に忍び込むウイルスや細菌は、人と人、人と物の移動が活発になればなるほど活動しやすい環境を与えられ、自分たちの生命世界を拡張していく。

 グローバル化された世界は、人や物の動きを活発化していく。この点だけに注目すれば、それは経済や社会の発展として肯定的にとらえられるのが普通である。

 ところが、気づかないうちに、この社会はある種の弱さも形成していく。それは、人間たちの暮らすコミュニティが希薄化し、かつてはコミュニティのなかにいれば守られていた人々が、根無し草の民衆として流動化する社会のなかに組み入れられていくことから発生する脆弱性である。

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