中国の劉暁明駐英大使は、ウイグル族に対して行われたとみられる人権侵害の映像を見せられ、「何の映像かわからない」と繰り返すばかりだった(『BBC NEWS JAPAN』より)

 

 「国土」や「国民」は自然発生的に生み出されるのではなく、為政者が創り出すストーリーに基づいて形成される。

 中国政府が盛んに主張する「中華民族」も例にもれず、

 「中国は多民族だが古代より連綿として引き継がれる《中華民族》という一体的な民族=国民観念を有する」

 という政府の説明や、歴代王朝と現代の国民国家を同一視する態度には、現政権の意図が明らかに反映されている。

 少数民族自治区や香港、マカオ、台湾を含む「中国」という国土において、「中華民族」が団結して国家建設に励むことこそが、中国共産党政権が理想とする姿だ。

 そうした理想像を念頭に行われているマイノリティへの人権侵害や差別の多くが、中国政府のみならず、少なからぬ中国の人々にも「正当な行為」と認識されていることに、我々は注意を払う必要がある。人権や民主主義、自由、平和、他者への尊重など、人間が人間らしく生きるために重要な概念や、基本的な価値意識に関して、中国共産党は独自の論理を展開し、日本を含む民主主義国と、それらを共有できない状況が一層顕著になっているからだ。

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