A砲撃が続くナゴルノ・カラバフの中心地ステパナケルト(C)AFP=時事

 

 

 旧ソ連地域のいわゆる「凍結された紛争(フローズン・コンフリクト)」の代表的事例であるナゴルノ・カラバフ紛争が、火を噴いている。

 様々な報道がすでになされているが、ここでは基本的なポイントについて記しておこう。

名称の成り立ちからして複雑

 ソ連時代、アゼルバイジャン共和国の内側に、アルメニア人住民が多数を占めるナゴルノ・カラバフ自治州が設置された。この地域の帰属を巡るアゼルバイジャンとアルメニアの争いが、いわゆるカラバフ紛争である。

 紛争の背景は極めて複雑である。

 コーカサス地方は黒海とカスピ海の間にある多民族地域であり、歴史的に地域を跨いで様々な民族が混住してきた。

「ナゴルノ・カラバフ」という名称自体、複雑な成り立ちで、ロシア語、トルコ語、ペルシア語の3つの言語の語彙が混ざっている。「ナゴルノ」はロシア語で高地を、「カラ」はトルコ語で黒を、「バフ(バーグ)」はペルシア語で庭を意味する。

 カラバフすなわち「黒い庭」は肥沃な土地に由来するとも言われるが、中世以来、なだらかな低地はトルコ系遊牧民が、高地はアルメニア系土豪が支配していた。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。