静かに引退した「本当の英雄」が誇りに思うこと

執筆者:舩越園子2020年10月13日
母国スコットランドでは彼こそ子どもたちの真のヒーロー(C)AFP=時事
 

「ポール・ローリーが引退を表明した」

 と聞いて、彼がどこでどんな大会を制したどれほどの選手だったのか、すぐに思い出せるゴルフファンは、世界中にどれぐらいいるだろうか。決して多くはないのだと思う。

 ローリーは現在51歳の英国人。スコットランド屈指の難コース「カーヌスティ・ゴルフリンクス」が舞台となった1999年「全英オープン」の優勝者だ。

 しかし、あの大会は「ローリーが勝った全英オープン」と言うより、「ジャン・バンデベルデが負けた全英オープン」として、ゴルフヒストリーにも人々の記憶にも刻まれてしまい、せっかくメジャー優勝を飾ったというのに、以後、ローリーには、どこか報われないイメージが付きまとった。いや、米メディアによって、そういう報じられ方をされてきたと表現すべきであろう。

 ちなみに、「あの全英オープン」の優勝争いの大詰めは、こんな展開だった。

 マンデー予選をクリアして本戦に出場したバンデベルデ(54)は、2位に3打差の単独首位で72ホール目を迎えた。優勝すれば、フランス人による全英制覇は92年ぶりの快挙。

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