埼玉西武ライオンズの球団オーナーも務める後藤高志・西武HD社長は強気一辺倒 (C)時事
 

 7年9カ月に及んだアベノミクスをタネ明かしすれば、低金利と円安誘導、それに無分別な財政出動に支えられた施策の列挙で大まかな説明がつく。

 その恩恵を存分に受けたのは、高株価で潤った投資家や空前のインバウンド(訪日外国人)ブームに踊った観光業者だった。前首相の安倍晋三(66)が政権に返り咲いた2012年に約836万人だった訪日外客数が、2019年には約3188万人と4倍近くに膨張。航空、鉄道、バスなど交通インフラはもとより、ホテルや飲食業、百貨店などの各業界が外国人客の旺盛な購買力で空前の収益を上げた。

 だが、猛威を振るった新型コロナウイルス感染症が、これらのビジネス基盤を次々に吹き飛ばした。破竹の勢いから一転、苦境のどん底に落ちた企業が相次いだが、その代表格が西武ホールディングス(HD)である。

800億円規模の資本増強

 10月15日、西武HD傘下の西武鉄道とプリンスホテルが合計800億円規模の資本増強を検討していることが明らかになった。メーンバンクのみずほ銀行と、経営不振企業の“駆け込み寺”になっている感のある日本政策投資銀行が、西武鉄道とプリンスホテルが発行する優先株(議決権に制限はあるが高い配当を受け取れる株)を400億円ずつ引き受ける方向。「遅くとも年内に完了する」と関係者は説明する。

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