「当確」の報に満面の笑みでガッツポーズ(C)EPA=時事
 

 ニューヨークに勤務していた二十数年前、いかにもアメリカらしい、次のような出来事に遭遇したことがある。

 人事の都合で、筆者の直属の上司だった米国三井物産エネルギー部門担当副社長が中東三井物産社長として転任することになった。後任はいない、という。その結果、同副社長付き秘書が不要になった。部店独立採算制を経営の根幹に置く三井物産では、抱える人員のコスト負担を含め、人事もすべてエネルギー部門が責任を持つべき問題だ。

 だが、着任して数カ月の筆者に、人事部長がやってきて、「岩瀬さんはいっさい本件に関わらないでください。人事部で対応しますから」と言う。

 多くの方がご存じのように、アメリカは「差別」に厳しいところだ。 

 これは筆者も経験したことだが、アメリカで新規に雇用しようとする場合、面接の場で聞けることはきわめて限られている。たとえば「住所」を聞いてはいけない。通勤に何時間かかろうと、本人が仕事をすることには関係ないからだ。また、読んでいる「本」や購読している「新聞」、あるいは見ている「テレビ番組」なども聞いてはいけない。思想信条のチェックにつながるからだそうだ。親がどんな「仕事」をしているか、などもとうぜん聞けない。

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