「怒り」を仕組む情報工作「手法と恐怖」

クリストファー・ワイリー  牧野洋・訳『マインドハッキング あなたの感情を支配し行動を操るソーシャルメディア』

執筆者:澤康臣2020年11月21日
筆者はブレグジット、4年前の米大統領選を“操作”した英国系情報戦略企業「ケンブリッジ・アナリティカ」の内部告発者。人心を動かした情報戦略を赤裸々に語っている

 2020年アメリカ大統領選で民主党ジョー・バイデン氏の勝利が判明しても、「バイデンは不正投票により当選した」「票を正しく数えればトランプが勝つ」というインターネット上の主張が止まらない。フェイスブックやツイッター、ユーチューブなどのソーシャルメディアを舞台に、現地アメリカだけでなく日本語のネット空間でもこうした声があふれる。

 それはあたかも、第2次世界大戦後、南米の日本人社会で敗戦を信じず日本は戦争に勝ったと主張した「勝ち組」の人々のようだ。75年前、海外情報が極度に乏しかった時代なら分からなくもない。

 だがインターネットで世界の情報が瞬時に伝わる現在、人はニセ情報に簡単に動かされ、拡散を繰り返す。瞬時に広まる情報の中には人種対立を煽る言説、フェミニズムや性的少数者の権利擁護をけなす言葉もある。

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