ボルソナーロ大統領を「悪者」と単純化するのは一旦待ってほしい(C)AFP=時事

 

『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』(ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド著、日経BP社)は、2019年に日本語でも出版されて、ビジネス書としてベストセラーとなっている。氾濫する情報社会において人間が支配されやすい10の本能を解説しながら、先入観や思い込みを排して物事を客観的に考える方法を伝える。

 本稿では、『ファクトフルネス』が説く本能を乗り越える主なルールに従い、コロナ禍のブラジルに関する報道を捉え直したい。

『ファクトフルネス』の大まかなルール

10万人当たりの死者数は高いとは言えない

 ブラジルにおいて2020年2月末頃から始まったCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染拡大は、多大な被害を出している。

 米ジョンズ・ホプキンス大学の調査によれば、本稿の執筆時点(2020年12月2日現在)で、世界の感染者が約6375万人超のところ、米国・ブラジル・インドの3カ国で約半数を占める。うちブラジルでは、感染者約600万人、死亡者16万9000人と、感染者数は世界で3位、死亡者数では2位となっている。

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