白人警官3人に激しく暴行される黒人男性の映像が法案反対デモにさらに火をつけた(C)AFP=時事
 

 フランスで目下、「国家」と「市民社会」の泥沼の攻防が続いている。11月28日と12月5日の週末に2週続けて、フランス中で権力に反対する抗議活動が繰り広げられた。

 ここで国家というのは、本来市民を守る側の警察権力のことだ。「国家=権力」と「社会=市民」の対立は、ヨーロッパ近代国家の歴史的構図だ。しかし今日、その構図は必ずしも明確ではない。市民側の主役が誰だか不明なのだ。

「近代市民」とはだれなのか。

 他方で、秩序維持の名目だとしても、国家権力の介入はどこまで許されるべきなのか。

 それは欧州だけでなく、先進社会のデモクラシーが問われている最大の課題だ。現在のヨーロッパ社会の現実がそこにある。

パリは燃えている

 12月5日土曜日、フランスでは全国で90件のデモが行われ、5万2350人(パリ5000人)が参加した。1週間前の全国70 都市、13万3000人(パリ4万6000人)が参加した11月28 日のデモに比べると静かで規模も縮小したが、パリでは参加者の一部が暴徒化し、治安部隊との激しい衝突の中で催涙弾が発射された。拘束者は64人に上った。

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