「アラブの春」から10年

執筆者:池内恵2020年12月17日

考えてみると、2020年12月17日は「アラブの春」からちょうど丸10年の、節目の日である。

限界まで引き伸ばして待ってもらった締切りを2本、日本語と英語で放り込んで、一息ついてニュースを整理していて気づいた。

「アラブの春」は、チュニジアとエジプトで相次いで政権が崩壊した2011年1月を起点に論じられがちだが、その発端は、2010年12月17日に、チュニジア南部の小都市シーディー・ブーゼイド(Sidi Bouzid)でムハンマド・ブーアズィーズィー(Muhammad Bu Azizi)青年が、警察による扱いに抗議して焼身自殺したことを発端とした大規模デモの拡大と伝播に端を発する。

サウジ系の新聞『シャルクル・アウサト』はこの日に、「アラブの春:タイムライン」という記事を掲載して振り返っている。

"The Arab Spring: Timeline," Asharq Al-Awsat, December 27, 2020.

この当時はサウジアラビアは「アラブの春」の伝播を脅威と感じ、肯定的な報道や論評にも制約があったが、サウジが「アラブの春」の荒波を体制を維持して乗り切った後に、10年の節目に振り返る時には、懐かしい「春」として想い出すようだ。

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