やはり役人任せでは介護現場は救えない

執筆者:出井康博2009年3月号

 一月二十九日、百一人のインドネシア人介護士が国内各地の老人介護施設で仕事を始めた。彼らは日本が介護分野で初めて受け入れた外国人労働者だ。 神奈川県海老名市にある老人ホーム「えびな南高齢者施設」には、ルコヤさん(二六)とソンティさん(二三)という二人の女性介護士が配属された。「ル、コ、ヤ! 難しい名前でしょう?」 イスラム教徒特有の黒いベール(ヘジャブ)で頭髪を覆ったソンティさんから、たどたどしい日本語で話しかけられ、七十代後半と思しき入居者の女性が満面の笑みで応じる。「かわいいねえ……」 そんなやり取りを見て、施設を運営する社会福祉法人「中心会」理事長の浦野正男氏が目を細める。「(インドネシア人介護士)二人とも素晴らしいです。職場に溶け込もうとがんばってくれている。入居者の方にも、いい刺激になると思います」 今回就労を始めたインドネシア人介護士たちは、インドネシアと日本が結んだ経済連携協定(EPA)に基づき昨年八月、ほぼ同数の看護師と一緒に来日し、日本語の勉強を続けてきた。日本にとって初めての取り組みとあって、就労開始のニュースはテレビや新聞でも数多く取り上げられたが、「人手不足の深刻化する介護業界にあって、外国人介護士が救世主として期待される」といった報道が目立った。しかし、現場の受け止め方は違う。二人のインドネシア人介護士に満足そうな表情の浦野氏も、仕事の面で彼女たちに大きな期待はしていない。

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