就任式では「民主主義の勝利」を宣言したバイデン大統領(C)EPA=時事
 

 

 ジョー・バイデン大統領の就任式は、厳戒態勢の下で行われる異例の事態となった。

 ドナルド・トランプという、分断した格差社会が生み出した異形のポピュリストが、反対派を敵として攻撃し、生んだ亀裂や傷跡はあまりにも深い。根拠なき言説を振りまくトランプを妄信する支持者が、国民の3分の1に上ると指摘される。

 バイデン民主党新政権は、「ベスト&ブライティスト」、伝統的エスタブリッシュメントの再登場とも映る。

 米国はこれまでも危機に際して復元力を示してきたが、「団結」を呼びかける新政権の下で、民主政治は再生へと向かえるのだろうか。米外交は、世界はもとより足場の米州でも信頼や指導力を失っている。

 その行方次第では、2020年代の中南米との関係の再構築にも大きな影を落とすことになろう。

議事堂事件の衝撃

 4年前のトランプ政権の誕生で米国の民主政治の制度的退行には慣れていたはずだったが、「選挙は盗まれた」と選挙結果を認めず権力に居座ろうとする大統領もさることながら、それに扇動される形で支持者が連邦議事堂を襲撃、占拠した事件はさすがに衝撃であった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。