最終回 リンカーン記念堂で唱えた祈り

執筆者:横田増生2021年2月1日
軍の装甲車で行き先を塞がれた連邦議会議事堂前。2021年1月17日(筆者撮影、以下同)

 

 この取材の終着点となるアメリカ大統領の就任式を取材するため、私がワシントンDCに到着したのは1月17日のこと。

 就任式で新大統領の宣誓や演説が行われる、連邦議会議事堂の近くにあるホテルを予約した。そう、1月6日、暴徒と化した「トランプ信者」たちが襲撃した場所の近くに。

 DCに着いて驚いたのは、その物々しい警備だった。

 10日の間に、首都が要塞のようになり、観光客の姿もほとんど見当たらない。大統領就任の祝賀ムードとは対極の冷え冷えとした空気が流れていた。6日の悪夢を、就任式で決して繰り返さないという固い意志がみえる。

 戒厳令下のような雰囲気だ。

 主要道路は封鎖され、議事堂がある「モール」と呼ばれる地域へのアクセスも不可能だった。高さ3メートルほどの柵で阻まれ、道路には一般の車が通行できないように軍の車両や、ブロックが置かれた。

 全米から集められたのは警察官やFBI(連邦捜査局)の捜査官、軍隊など。軍隊だけでも2万5000人が集められていた。警官などを含めると、4、5万人にも上るのか。

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