「新自由主義」の信奉者だったはずが、金融危機で経済への積極介入を進め、救世主を演じる。その陰にはゲノという脚本家がいた。[パリ発]フランス東部の人口二万人足らずの街ブズールは、もし郊外にPSAプジョー・シトロエンの工場がなかったら、寂れた地方都市に過ぎないだろう。四十三ヘクタールあまりの敷地に五十近い建物が並ぶその工場は、地元オートソーヌ県最大となる約四千人の雇用を抱え、地域経済を牽引している。 一月十五日、サルコジ大統領が財務相や産業担当相を従え、この工場を訪れた。従業員を前に、大統領は自動車産業強化策について一席ぶった。「自動車メーカーは、ひとりぼっちではない。国家が全面的に後ろで支えている。フランスのアイデンティティーを代表している工場を守るために、全力で闘うつもりだ」 金融危機の影響が顕著になった昨秋以降、サルコジ大統領は他の欧州各国の首脳に先駆け、産業界に積極的に介入する姿勢を鮮明にした。十月には大手銀行への公的資金の一斉注入を表明し、銀行の融資促進を求めた。十二月には、住宅建設と自動車の分野で雇用確保を目的とした総額二百六十億ユーロ(約三兆円)の支援計画を発表。関連産業を含めると労働力人口の一割を養う自動車産業へのてこ入れは特に多様で、矢継ぎ早に支援策を打ち出す一方で、「工場を国外移転するなら支援を打ち切る」と釘を刺すことも忘れていない。

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