ミン・アウン・フライン将軍とスー・チー氏=2015年12月の初会談にて(C)EPA=時事

 

 2021年2月1日、それまでなんとか持ち堪えていたアウン・サン・スー・チー政権と国軍との間のバランスが、崩れてしまった。

 この日の未明、スー・チー国家顧問をはじめとする政府閣僚、与党・国民民主連盟(NLD)幹部や関係者、さらに政治活動家、作家など100人以上が国軍によって拘束された。首都ネピドーだけではなく、最大都市ヤンゴンや第2の都市マンダレーを含めた各地で地方政府の幹部も一時的に拘束され、多くは今も自宅軟禁下にあるNLD関係者の逮捕が広がっている。

 当時、ネピドーは通信手段が遮断されて、ヤンゴンでも携帯電話が通じなくなっていた。スー・チー国家顧問とウィン・ミン大統領の拘束には、車両ではなく国軍のヘリコプターが使用されたと言われる。地方政府の首長についても、事前に彼らの居場所をおさえて、ほぼ同時に拘束した模様だ。周到に準備されて、今回の作戦が遂行されたことがわかる。

 拘束から数時間で憲法417条に基づく非常事態宣言が発令され、国家の全権が国軍最高司令官であるミン・アウン・フライン将軍に移譲された。その間、国軍は一発の銃弾も使わなかった。

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