デモに対する世論の風向きを変えたレッド・フォート占拠(C)AFP=時事

 

 2020年9月末にインドで可決・成立した「農産物流通促進法」など3つのいわゆる「新農業法」に対する農民らの抗議行動が先鋭化し、警官隊との衝突で多数の死傷者を出す事態に発展している。

 シーク教過激派やパキスタンなどの関与を指摘する陰謀論が浮上し、海外からも農民への連帯を表明する声が上がるなど、農業改革という本来の目的から逸脱した議論があらぬ方向に動き出した。

 農産物流通の自由化で農民の所得向上を目指すという政策は、準備不足や政府への不信感によって実施が大幅に遅れそうだ。

疑心暗鬼に駆られた農民

 新農業法は、ナレンドラ・モディ政権がようやく着手した本格的な農業改革の第1弾となるはずだった。

 農民が「マンディ」と呼ばれる地域の公設市場を通さず、州外のスーパーや加工業者などに自由に農産物を販売できるようになることで、農民の情報不足に付け込んで野菜や果実を安く買いたたく悪徳仲買人を排除。農民の所得向上につながるという触れ込みだったのだが、北西部パンジャブ州やデリー近郊ハリヤナ州などの農民は、

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