成田空港で検疫所職員とバスを待つ(筆者撮影、以下同)

 

「あぁん!? オタク、なんか文句あんの? 文句があるんだったら、これだからね」

 不機嫌さを隠そうともせず、そう言う男性の手には「停留決定書」の文字が入った書面があった。

「こっちは上から言われたことをやっているだけなんだから、オタクと議論している時間はないんだよ」

 と言い放ったのは、成田空港検疫所の職員だ。

 久しぶりに帰国した日本で初めて会話を交わした相手から返ってきたのはとげとげしい言葉だった。

 後で考えると、それから4日間、付き合うことになる検疫所の体質を的確に言い表した言葉だったともいえる。

 そこに通底するのは、説明責任の欠落と無責任主義だ。

 私が乗った米ボストン発の飛行機が成田空港に到着したのは、1月24日午後3時すぎ。2回目の緊急事態宣言が出された影響だろう。機内に乗客は5人しかいなかった。

 アメリカを出発する前夜。ネットで帰国に関する情報を見ていると、1月13日以降、日本に帰国する日本人は、出発前の72時間以内に、新型コロナウイルスの検査を受け陰性を証明する検査証明書を取り、入国時に検疫官に提出するとあった。

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