感染者をゼロにせよ、とワイドショーは言う。それには社会活動を停止するしかないはずなのに(筆者撮影、以下同)

 

 翌1月25日、テレビのワイドショーを見ていると、冒頭からコロナの話題。途中で、男性コメンテーターがこう言った。

「この緊急事態宣言の間、私たちは、コロナの感染者ゼロを目指さなければなりません」

 その言葉を受け司会者が、「その通りです。感染者はゼロにしなければいけません」と、力を込めた声で返す。

 その受け答えを聞きながら、私は「本気なのか」、「正気なのか」と訝った。

 ワクチン接種前に、感染者をゼロにするには、社会活動を完全に停止するしかない。今放送しているテレビ番組を制作することにも感染リスクが伴うはずだ。そうした番組を放送しながら、感染者ゼロを目指すとは、なんたる自己矛盾――。

 ワクチン接種前にコロナの感染者をゼロにするというのは、根拠のない根性論というか、一見するとコロナに取り組む覚悟を語っているようでありながら、むしろ、いたずらにコロナの危険を煽っているようにみえた。

 コロナの恐怖を言い立てれば、水戸黄門の印籠のごとく、だれもがその前にひれ伏すような万能効果を持っていると信じているワイドショーの住民たちが、異星人のような存在にみえた。

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