『危機の指導者 チャーチル』『マーガレット・サッチャー 政治を変えた「鉄の女」』の2冊を並べて、著者が外交官と思う人はいないだろう。知っている人も少ないはずだ。この2冊の著者は、この1月に新駐米大使に就いた冨田浩司氏(63)だ。冨田氏は持ち前の外交手腕に加えて、外務省内では多才な「異能の主」としても知られる。

 米国はトランプ政権からバイデン政権へ移り、両国間の主要な政策が大きく変容している。日本も対米政策の大きな転換を迫られることになった。その中で、これまで事務次官経験者や事務次官級の外務審議官経験者などをあてるケースが多かった駐米大使に、駐韓大使だった冨田氏をあてたのだ。駐韓大使からの起用は異例ともいえるもので、また冨田氏の韓国大使の在任期間がわずか1年というのも余り例はなく、異例ずくめになった。

 冨田氏は兵庫県生まれで、東大学法学部を卒業後、1981年に外務省に入省した。総合外交政策局総務課長や在英国日本大使館公使、在米国日本大使館次席公使、北米局長、在イスラエル日本大使を経て、2018年8月からはG20サミット担当大使などを歴任している。G20大阪サミットでは、議長国・日本の担当大使として首脳宣言の取りまとめなどにあたった。

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