昨年6月、河野太郎防衛大臣(当時)が突如として発表した、イージス・アショア配備計画の断念。その代替案として、昨年末には「イージス・システム搭載艦2隻を整備し、海上自衛隊が保持する」と閣議決定した。

 だがそもそも、イージス・アショア配備の目的は、これまで海自のイージス艦が担ってきた弾道ミサイル迎撃任務を、陸上自衛隊に移管すること。陸上施設なら天候などに左右されず、迎撃態勢を24時間維持できる。さらに、人員不足が深刻な海自の負担軽減にもなる。

 それが昨年末の「洋上回帰」決定で振り出しに戻った。防衛省は昨年10月、造船大手2社(三菱重工業とジャパンマリンユナイテッド)に、「イージス・システム搭載艦」建造に関する調査を2億4000万円で発注している。調査結果の提出期限は今年4月末。通常なら4~5年は掛かるとされる新造艦の設計を、わずか半年程度でやれという無茶ぶりだ。ちなみに「イージス・システム搭載艦」とは、弾道ミサイル迎撃以外の各種戦闘機能も備えたフルスペックの「イージス艦」と区別するための呼称である。

 運用を任される海自の関係者は困惑顔だ。新造艦には、防衛省がイージス・アショア向けに選定・契約した、米ロッキード・マーティン社のレーダーを搭載する方向である。しかし海自内には、新造艦の導入に際しては、米海軍が新型イージス艦等に採用した米レイセオン社製のレーダーを望む声も根強い。アショア向けに契約したレーダー等は、「もう一度考え直して、陸上に配備し陸自が運用すべきだ」というのが海自サイドの本音だろう。

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