世界が注目するべリングキャット(HPより)

 

 ロシアの反体制政治家アレクセイ・ナワリヌイの毒殺未遂事件の真相を暴いた調査グループ「ベリングキャット」が注目を集めている。インターネット上の情報やデジタルデータの分析を駆使した手法は、欧米の情報機関や主要メディアにも波紋を広げそうだ。

闇市場で売りさばかれているデータ

 2020年12月、旧ソ連国家保安委員会(KGB)の後継機関であるロシア連邦保安庁(FSB)の非合法活動を暴露したベリングキャットの調査報道が衝撃を与えた。同年8 月にサリンの5 倍の殺傷力を持つとされる猛毒ノビチョクを盛られ、一時意識不明の重体に陥ったナワリヌイの事件に関わったFSB工作員8人を割り出し、名前と写真を公表したのだ。ナワリヌイ自身が後日、このうち1人の工作員に政府高官を装って電話し、犯行を認める発言を引き出したとされる記録も公開した。

 ベリングキャットの調査手法はこうだ。飛行機の搭乗記録や携帯電話の位置情報を分析し、ナワリヌイが移動するたびに、同じルートで動いていた複数のFSB工作員の存在を突き止めた。さらに工作員の通信記録を調べ、ナワリヌイの体調が急変した直後に化学兵器研究所の関係者などと頻繁に連絡を取り合っていたことを探り当てた。

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