中道路線へ修正を図るイギリス労働党に「若者離れ」というジレンマ

「建設的な野党」への転換は草の根運動「モメンタム」の支持を得られず

執筆者:名古屋和希2021年3月20日
新型コロナ対応の経済対策など、保守党との差別化が難しい局面も増えている (C)AFP=時事

選挙で大敗を喫した党をどう再建すべきか。新党首の就任からまもなく1年を迎える英国の最大野党・労働党が、路線運営を巡るジレンマに直面している。

「頼むから国旗は勘弁してくれ」。2月半ば、労働党党首、キア・スターマー(58)が新型コロナウイルス対応の経済対策を公表したオンライン会見。ツイッターで批判の矛先が向けられたのは、党首の傍らに掲げられた英国旗「ユニオン・ジャック」だ。愛国心を喚起するようなイメージ戦略には、党の左派グループを中心に根強い反発がある。

 スターマーはリーズ大学とオックスフォード大学で法律を修め、人権問題を扱う弁護士として活動。2013年まで検察長官を務め、2015年に政界入りした。自らを社会主義者と称し、党内では穏健左派に属する。昨年4月の党首選で、強硬左派出身の前任、ジェレミー・コービン(71)の後継候補らを破り、トップの座についた。

 近年、党内には大まかに「①中道派」「②穏健左派」「③強硬左派」――の3派が存在し、パワーバランスは大きな変遷を辿ってきた。1997年に政権交代を成し遂げた中道派のトニー・ブレア(67)が掲げたのが、市場経済を重視する「ニューレイバー(新生労働党)」。党はウイングを右に広げ、10年もの長期政権を築いた。しかし、イラク戦争への積極介入などでブレア路線がかげりをみせると、左派が台頭した。

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