厳しい姿勢で中国との会談に臨んだ、米国のブリンケン国務長官(右から2人目)とサリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官(右)(C)AFP=時事

 

激しい言葉の応酬となった、アラスカ・アンカレジでの米中外交トップ会談。毅然たる姿勢を見せた米国に「強さの復活」を見る向きもあるが、ことはそれほど単純ではなさそうだ。分析を重ねて見えてくるのは、あらゆる分野で中国の勢いを抑えられない米国の姿――。

 米中外交トップがアラスカで行った会談は現在の両国関係を象徴する丁々発止のやりとりで世界の聴衆を沸かせた。中国に甘いとされていたジョー・バイデン政権がタフに振る舞い中国側を怒らせたことへの喝采も広がっている。だが派手な会談の陰に隠れたいくつかの実情を見れば、そうした満足感は消えてしまう。中国の勢いはあらゆる面で露わだからだ。日本が米国を支えるのは当然だが、米外交トップがアラスカで語った「熾烈な競争」を過信するのは禁物だ。

「米軍は中国軍に勝てない」

 中国の勢い、そして米軍の劣勢は、さまざまな報告や証言がなされている。

 最初に米中軍事バランスの変化を知らせたのは、2015年4月に発表された米シンクタンク・ランド研究所の図上演習報告書「The U.S.-China Military Scorecard」であろう。核兵器も含めた総合力では中国はもちろん米軍に勝てないものの、周辺地域ではすでに優勢であると指摘した。

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