中国に勝てないから同盟国を巻き込む:アラスカ会談の実相を読む

厳しい姿勢で中国との会談に臨んだ、米国のブリンケン国務長官(右から2人目)とサリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官(右)(C)AFP=時事

 

激しい言葉の応酬となった、アラスカ・アンカレジでの米中外交トップ会談。毅然たる姿勢を見せた米国に「強さの復活」を見る向きもあるが、ことはそれほど単純ではなさそうだ。分析を重ねて見えてくるのは、あらゆる分野で中国の勢いを抑えられない米国の姿――。

 米中外交トップがアラスカで行った会談は現在の両国関係を象徴する丁々発止のやりとりで世界の聴衆を沸かせた。中国に甘いとされていたジョー・バイデン政権がタフに振る舞い中国側を怒らせたことへの喝采も広がっている。だが派手な会談の陰に隠れたいくつかの実情を見れば、そうした満足感は消えてしまう。中国の勢いはあらゆる面で露わだからだ。日本が米国を支えるのは当然だが、米外交トップがアラスカで語った「熾烈な競争」を過信するのは禁物だ。

カテゴリ: 軍事・防衛 政治
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執筆者プロフィール
杉田弘毅(すぎたひろき) ジャーナリスト・明治大学特任教授。1957年生まれ。一橋大学を卒業後、共同通信社でテヘラン支局長、ワシントン特派員、ワシントン支局長、論説委員長などを経て現在客員論説委員。多彩な言論活動で国際報道の質を高めたとして、2021年度日本記者クラブ賞受賞。BS朝日「日曜スクープ」アンカー兼務。安倍ジャーナリスト・フェローシップ選考委員、国際新聞編集者協会理事などを歴任。著書に『検証 非核の選択』(岩波書店)、『アメリカはなぜ変われるのか』(ちくま新書)、『入門 トランプ政権』(共同通信社)、『「ポスト・グローバル時代」の地政学』(新潮選書)、『アメリカの制裁外交』(岩波新書)『国際報道を問いなおす』(ちくま新書)など。
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