3月23日(火)に行われたForesightオンラインセミナー(2)です。 

 常連執筆者でロシア軍事に詳しい小泉悠・東京大学特任助教を講師としてお招きし、「地盤沈下に抗うロシアの軍事戦略」というテーマでお話しいただきました。

 かりにロシアの言う通りアメリカから目に見えない侵略を受けているとすると、それを抑止しないといけないわけですが、そこで興味深いのがロシア人の考える「抑止」です。

 英語の「deterrence」には、接触したくないのでこっちに来ないで――という非接触の抑止というイメージがありますよね。安全保障用語には「懲罰的抑止」と「拒否的抑止」というのがあり、懲罰的抑止は我々に何かするとお仕置きをするよ、というもの。「拒否的抑止」は、お前たちの攻撃はすべて無効化されるから無駄だ、というもの。

 しかし、ロシア人の考える「抑止」(сдерживание)はちょっと違います。ロシア軍事思想を研究している人たちの論文を読んでいると、ロシア人の考える「抑止」はより接触的なイメージを含んでいる。相手を抑え込んだり小突いたりして、「俺は怖いんだぞ。だから手を出してくるんじゃない」と言う。つまり、ある程度ダメージを与えて怖ろしさを認識させることが抑止になる、という発想です。

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