薄れゆく「イラン対サウジの覇権競争」

執筆者:池内恵2021年4月25日
2019年のサウジ石油施設へのドローン攻撃に米・イスラエルは沈黙を守った。対イラン「最大限の圧力」政策の最前線に取り残されたサウジは…… (C)EPA=時事

 中東外交の水面下での動きが激しくなっている。ここ数年の中東を形作ってきた様々な前提を覆しかねない変化が各所で見え隠れする。

 そのうちの最も顕著なものは、イランとサウジの高官による水面下での交渉の報道だろう。

『フィナンシャル・タイムズ』(FT)の4月18日のスクープ報道によれば、イランとサウジの情報・安全保障を担当する高官が、4月9日にイラクのバグダードで協議を開催したとのこと。協議は月内にも再度断続的に開催される見通しである。

"Saudi and Iranian officials hold talks to patch up relations," Finantial Times, APRIL 18, 2021.

 FTの報道によれば、協議に参加したのは、サウジ側代表団はハーリド・ビン・アリー・フマイダーン総合情報庁長官(Khalid bin Ali al-Humaidan)が率いていた。AFPの報道によれば、イラン側から協議の場に出たのは国家安全保障最高評議会の書記アリー・シャムハーニー(Ali Shamkhani)の代理(representatives)であった模様。イラクのムスタファー・カーズィミー首相(Mustafa al-Kadhimi)が仲介したとされる。

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