「スコットランド独立」の現実味(下)

スコットランドが要らないイングランド人

執筆者:国末憲人2021年5月1日
2020年1月に行われたスコットランド独立を求めるデモ(C)AFP=時事

 

 5月6日に行われるスコットランド自治議会選では、独立と欧州連合(EU)加盟を掲げる現・自治政府与党スコットランド国民党(SNP)の過半数獲得が有力視されている。そうなれば、党首兼第一大臣(首相)のニコラ・スタージョンは、2014年以来となる住民投票の実施を求めるだろう。

 ただ、実際の独立までには多くの障害が立ちはだかっている。

常識を備えた政治家なら二の足を踏む

 北海油田が枯渇に近づき、際立った産業にも乏しいスコットランド経済に、明るい材料は多くない。

 英ポンドを通貨として使えなくなっても大丈夫なのか。独立後、EUの関税同盟に入るとすると、イングランドとの間に国境が生じることになるが、それで物流を確保できるのか。独立後の経済には、課題が山積している。

 また、独立後も立憲君主制のもと女王エリザベス2世を元首として戴き続けるのか、共和制に移行するのかを巡っても、議論はまとまりそうにない。

 国民党が目指すというEU加盟も、簡単な道のりではない。新規加入には現加盟国すべての承認が必要だが、自国内でカタルーニャやバスクの分離運動に悩むスペインは、簡単には認めないだろう。また、「財政赤字は国内総生産(GDP)の3%以内」というEU加盟国共通のルールがあるが、スコットランドは8.6%と大きくはみ出しており、そもそも加盟資格を持つのかさえ判然としない。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。