排出権ビジネス「EU・アメリカの闘い」だった気候変動サミット

グリーンに群がるマネーと政治の火花

執筆者:滝田洋一2021年5月4日
「46%削減」に現実的な対策をとれるのか(気候変動サミットで演説する菅義偉首相と小泉進次郎環境相・右=(c)時事)

 ニューヨークダウ工業株30種平均など米国株、ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)が高騰し、その裏側ではファミリーオフィス(富裕層の資産管理会社)やSPAC(特別目的買収会社)が巨額資金を集め、うごめいている。そして世界の巨大マネーが新たな矛先を向けている分野がある。グリーン(環境)だ。

 排出権取引の宴の主役は、新しい儲け口にひときわ鋭い嗅覚を発揮するヘッジファンドの資金運用担当者たちだ。米大統領選の帰趨が定まらなかった昨年夏の時点で、排出権市場の関係者は「2022年にはEUの排出権価格は1トン当たり40ユーロに上昇するだろう」という見通しを披露していた。当時の価格は30ユーロ手前だった。

 お見事。5月4日の欧州で初めて50ユーロ(約6500円)を突破した排出権価格の急騰ぶりをみれば、「22年に40ユーロ」の見通しが"謙虚"とさえ見えてくる。ファンド勢はこうした流れに乗って、大もうけを上げた。

 ブレバン・ハワード(Brevan Howard)やシタデル(Citadel)などの世界の大手ヘッジファンドは、排出権取引を拡大中だ。米大手金融機関のモルガン・スタンレーやシティグループ、インフラ投資に強い豪投資銀行マッコーリー(Macquarie)も取引に力を入れる。

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