すべての王朝が農民蜂起により打倒されてきた中国。指導者にとって「統治の正当性」は死活問題だ   (c)AFP=時事

 中国といえば、共産党の一党支配による強権政治の国というイメージが強い。奇跡の経済発展と軍事力の急速な増強。この国力の増大を大きな背景として、権力を手中に収めた習近平が、国内の反対意見を押さえ込み、世界に対しては強硬に自己主張をし、中国中心の世界を作ろうとしている――中国について、最近こういうイメージで語られることが多い。だが私の理解する中国と習近平政権は、このイメージとはかなり違うのだ。

   今回は、手始めに私の理解する中国共産党と国民との関係について述べてみたい。そのことを通じ世界が持つ中国のイメージと現実との落差が見えてくるだろう。習近平政権は、国民との緊張関係という厳しい現実の中で中国を統治し、対外関係を処理している。「彼を知り、己を知れば百戦して殆(あや)うからず」である。中国を徹底的に理解してこそ中国に対し最も効果的な対応策を見いだすことができるのである。

習近平の背後には「権力集中」を容認する党内世論

 1966年に始まり10年続いた中国の文化大革命は、中国共産党の一つのイメージを作り上げた。それはカリスマ的指導者毛沢東と、それに従順に付き従う共産党および国民という姿である。天安門広場を埋め尽くす若者たちは、『毛沢東語録』を手にかざし、天安門の楼上に姿を現した毛沢東に歓喜した。この映像は全世界に流れた。あの当時、毛沢東が、すなわち共産党であり中国であった。その毛沢東が文化大革命という大災害に中国を陥れ、多くの人命を奪い、経済を大きく後退させ、文化を徹底的に破壊した。

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