習近平を毛沢東と重ねてはいけない:中国共産党が直面する「民意の先取り」という難題

執筆者:宮本雄二 2021年5月10日
エリア: アジア
すべての王朝が農民蜂起により打倒されてきた中国。指導者にとって「統治の正当性」は死活問題だ   (c)AFP=時事
習近平体制の本質は、江沢民・胡錦濤時代よりも権力集中的だが「集団指導制」のままだと言える。毛沢東の教訓――鄧小平の国民に見放されることへの恐怖は今も変わらず、政権は豊かな市民の価値観に応じながらその「統治の正当性」を維持するという、複雑な舵取りの只中にいる。

 中国といえば、共産党の一党支配による強権政治の国というイメージが強い。奇跡の経済発展と軍事力の急速な増強。この国力の増大を大きな背景として、権力を手中に収めた習近平が、国内の反対意見を押さえ込み、世界に対しては強硬に自己主張をし、中国中心の世界を作ろうとしている――中国について、最近こういうイメージで語られることが多い。だが私の理解する中国と習近平政権は、このイメージとはかなり違うのだ。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
宮本雄二(みやもとゆうじ) 宮本アジア研究所代表、元駐中国特命全権大使。1946年福岡県生まれ。69年京都大学法学部卒業後、外務省入省。78年国際連合日本政府代表部一等書記官、81年在中華人民共和国日本国大使館一等書記官、83年欧亜局ソヴィエト連邦課首席事務官、85年国際連合局軍縮課長、87年大臣官房外務大臣秘書官。89 年情報調査局企画課長、90年アジア局中国課長、91年英国国際戦略問題研究所(IISS)研究員、92年外務省研修所副所長、94年在アトランタ日本国総領事館総領事。97年在中華人民共和国日本国大使館特命全権公使、2001年軍備管理・科学審議官(大使)、02年在ミャンマー連邦日本国大使館特命全権大使、04年特命全権大使(沖縄担当)、2006年在中華人民共和国日本国大使館特命全権大使。2010年退官。現在、宮本アジア研究所代表、日本アジア共同体文化協力機構(JACCCO)理事長、日中友好会館会長代行。著書に『これから、中国とどう付き合うか』『激変ミャンマーを読み解く』『習近平の中国』『強硬外交を反省する中国』『日中の失敗の本質 新時代の中国との付き合い方』『2035年の中国―習近平路線は生き残るか―』などがある。
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