IEA「2050年排出ネットゼロ」工程表の衝撃的内容

『Net Zero by 2050 – A Roadmap for the Global Energy Sector』で前提とされる社会とは

執筆者:岩瀬昇2021年5月24日
IEAが持つ世界のエネルギー政策への影響力は強まっている

 筆者が代表世話人を務めている「新興国」と「エネルギー」をキーワードとしている異業種勉強会「金曜懇話会」には、様々なバックグラウンドを持った、多様な会員が集まっている。中には「IEA(国際エネルギー機関)」に出向勤務したことがある会員もおり、偶数月に開催している例会で一度「経験談」を話してもらったことがある。

 興味深い裏話も種々あったが、筆者が今でも記憶しているのは、現在の事務局長(Executive Director)ファテイ・ビロルの就任が決まったとき「IEA」職員はこぞって喜んだ、というエピソードだ。

 1958年3月、トルコのアンカラに生まれたファテイ・ビロルは「OPEC(石油輸出国機構)」などに勤務した後、1995年10月「IEA」に入り、事務局長に選任された2015年9月まではチーフ・エコノミストを務めていた。2019年9月に再選され、現在は4年任期の2期目にある。日本人として唯一人、この重責を務めた田中伸男氏のように、加盟国の官僚経験者が代々務めていた事務局長というポジションに、チーフ・エコノミストが内部昇格した、ということが、自分たちの仕事の重要性と成果が認められたと「IEA」職員たちが感じたのであろう。

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