今年2月、先行接種会場を視察する菅首相(左から2人目)。「今年前半までに全国民に」という公約は儚く消えたか (C)時事

 5月30日付『朝日新聞』朝刊の1面トップ「ワクチン出遅れ首相直談判」という見出しの記事を読んで、驚いた。5日前、25日付の『読売新聞』朝刊の政治面に、見出しがそっくりな「ファイザーに首相直談判」という記事が掲載されていたからだ。内容も、一部が酷似している。

 日本のリベラルと保守を代表する両紙は、一体何を伝えたのだろうか。

 新型コロナウイルスのワクチン問題は多くの国民にとって最大の関心事だが、政府はワクチンの調達に関する情報公開には全く消極的。だが、菅義偉首相の政権浮揚につながる情報の意図的リークには積極的なのだ。

 両紙はまさに菅首相が自らワクチン確保に懸命に動いているとする情報を伝えていた。

 しかし、現実はどうだろう。菅首相は昨年9月16日の就任会見で、

「来年前半までに全国民分のワクチンを確保する」

 と約束した。だが、約束の履行はもはや不可能だ。政府はファイザーなど製薬大手と確実契約を計画的に締結してこなかったからドタバタ劇も生じる。

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